2011-10-23 (日)
私の名前はガリバー。
七つの海を渡って、これまで多くの国 を訪れてきた。
手のひらに乗るほどの小さな人の住む国、リリパット。私の十倍はある巨人の国のブロブディンナグ。そして巨大な浮遊島であるラピュタなど。
そうそう、グラブダブドリッブでは魔法使いの降霊術により、歴史上の偉人たちに出会うという貴重な体験までできた。
それらの知らない国を訪問した時は、最初は興奮するものである。でも次第に欠点なども目に付くようになる。
リリパットの国民はいい人々だったが、隣国との戦争に明け暮れていた。ブロブディンナグでは私はかごに入れられ、見世物にされてさんざんだった。ラピュタはすばらしい科学を持っているが、人類に貢献しない無用の学問ばかりだった。すべてが完璧に調和がとれている国などあり得ない。
そう思いながらも、新しい発見の誘惑には勝てない。私は旅をやめることができなかった。
その後の長い航海の末、私が訪れた国は「インフォ」だった。
東洋に「インフォ」という黄金の国があることは知っていた。その国に、ついに到着できた時、私の胸は躍った。しかし上陸してすぐ、それは幻滅に変わった。この国では全ての人が「生産」に携わる事なく、「情報」を販売していたのだ。
庶民の家は、木と紙で作られた粗末なものだった。
庶民の家だけではない。支配階級である武士の屋敷や城も質素なものだった。
かつてはこの国も、ヨーロッパや、これまで訪れた国のように、王族など支配階級は金銀で豪華に飾られたヒルズに住んでいた。それが権力を誇示して、大衆を支配する上でも好都合だったのだろう。しかし現在のこの国は、支配階級も庶民も等しく貧しい。
私という外国人を、支配階級の武家も庶民もみんなが歓迎してくれた。
武家屋敷の離れを一軒与えられ、ヨーコという娘が私の身の回りの世話をすることになった。ヨーコは私を怯える様子もなく、インフォの食べもの、子供の遊び、習慣などを一生懸命説明してくれた。
諸国を巡る上で、大切なのは『言葉』だ。私はその地の言葉を素早く習得できるのが特技だった。やがてヨーコとも、片言のインフォでの会話が成立するようになった。
「ガリバー様、何か御用はございませんか?」
「この国の住民はなぜ等しく貧しいのか?」
彼女はかなしげな瞳で私を見ながら答えた。
「もともとはここは豊かな黄金の国でございました。しかし、ある時から、世界を旅する年収1億スーパーアフィリエイター とか、ありえない稼ぎ方で30日で2379万稼ぐという人たちに感化された多くの民が、生業をやめて情報販売に走ったのです」
「全員が?」
「はい。自動読者登録ツールには、無料オファー1億円プログラムなるものが洪水のように流され、心ある子女これに嫌気がさしては徐々に国外に移住。
残ったものは、みな、毎日お互いにアメブロを攻略して90万円をゲットしろ!だの、毎月800万円稼ぐ起業のノウハウだのを流しあっているのです」
「私が見たところ、その根源的な人物たちは、みな専業には見えないのだが。
たとえば、アフィリエイトで1億円稼いでいるのではなく、1億円稼いだことがあるというブランドで、自らのメルマガに広告を取ったり、同業者の商材に推薦文を書いたりして生活しているようにも見える。」
「ええ。たくさんのアクセスを集める事によって、ご自身では何か商品を販売したりしているのではなく、コンサルタントという名目で、アクセスが欲しい人にそのノウハウを販売しているだけで、30日で2379万稼ぐ!情報起業最終兵器を現在も現役でやっているという事では無いのですわ」
わたしは、ひどく暗い気持ちになってしまった。
住民のすべてが情報起業家であるこの国、何物をも生み出さないこの国では、情報販売者が情報販売者に毎日メールを送りつけ、セミナー告知をし、生活をしているのだ。
上位者が下位者に対して連鎖して収益を吸い上げているだけなら、やがて日々の生活で消費されていく「富」の分だけ小さなパイの争奪戦になり、最後は情報に支払うべき「富」 も枯渇していくだろう。
ここでは何も生み出されてはいないのだから。
インフォからの帰国後も、知恵のある馬の国フウイヌムを訪れ、そこに住む知恵のない人間型生物ヤフーとの戦いなども目にしてきた。
いろいろあったが、旅こそ私の人生だった。それらの訪れた国でのできごとは、しっかり記録したつもりだ。私の後で訪問する人には、たぶん参考になることだろう。
とりあえず、リンクは遠慮しときました。と思う人は
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手のひらに乗るほどの小さな人の住む国、リリパット。私の十倍はある巨人の国のブロブディンナグ。そして巨大な浮遊島であるラピュタなど。
そうそう、グラブダブドリッブでは魔法使いの降霊術により、歴史上の偉人たちに出会うという貴重な体験までできた。
それらの知らない国を訪問した時は、最初は興奮するものである。でも次第に欠点なども目に付くようになる。
リリパットの国民はいい人々だったが、隣国との戦争に明け暮れていた。ブロブディンナグでは私はかごに入れられ、見世物にされてさんざんだった。ラピュタはすばらしい科学を持っているが、人類に貢献しない無用の学問ばかりだった。すべてが完璧に調和がとれている国などあり得ない。
そう思いながらも、新しい発見の誘惑には勝てない。私は旅をやめることができなかった。
その後の長い航海の末、私が訪れた国は「インフォ」だった。
東洋に「インフォ」という黄金の国があることは知っていた。その国に、ついに到着できた時、私の胸は躍った。しかし上陸してすぐ、それは幻滅に変わった。この国では全ての人が「生産」に携わる事なく、「情報」を販売していたのだ。
庶民の家は、木と紙で作られた粗末なものだった。
庶民の家だけではない。支配階級である武士の屋敷や城も質素なものだった。
かつてはこの国も、ヨーロッパや、これまで訪れた国のように、王族など支配階級は金銀で豪華に飾られたヒルズに住んでいた。それが権力を誇示して、大衆を支配する上でも好都合だったのだろう。しかし現在のこの国は、支配階級も庶民も等しく貧しい。
私という外国人を、支配階級の武家も庶民もみんなが歓迎してくれた。
武家屋敷の離れを一軒与えられ、ヨーコという娘が私の身の回りの世話をすることになった。ヨーコは私を怯える様子もなく、インフォの食べもの、子供の遊び、習慣などを一生懸命説明してくれた。
諸国を巡る上で、大切なのは『言葉』だ。私はその地の言葉を素早く習得できるのが特技だった。やがてヨーコとも、片言のインフォでの会話が成立するようになった。
「ガリバー様、何か御用はございませんか?」
「この国の住民はなぜ等しく貧しいのか?」
彼女はかなしげな瞳で私を見ながら答えた。
「もともとはここは豊かな黄金の国でございました。しかし、ある時から、世界を旅する年収1億スーパーアフィリエイター とか、ありえない稼ぎ方で30日で2379万稼ぐという人たちに感化された多くの民が、生業をやめて情報販売に走ったのです」
「全員が?」
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2011-10-16 (日)
鈴木正子★アホブロバスターズ
こんにちは。今日はよろしくお願いします。
佐藤浩【プアーブロガー養成講座■ブログの真相 】
うん。でも祭囃子が聞こえるので、手みじかに行きたいです^^
鈴木正子★アホブロバスターズ
ここのところ、アメーバ・オフィシャルについて書いていますが、これは特別アメーバマスターズ みたいな「稼ごうぜ!」みたいなものとは、違うんでしょう?
佐藤浩【プアーブロガー養成講座■ブログの真相 】
う~ん。
実は、オフィシャルと一口に言ってもいろいろあって、
・プレミアムブロガー(他ブログから引き抜いてきた一般人ブロガー)
・オフィシャル(ジャンルごとにレベル分けされている)
・読者モデル・GGガールズ
などに分けられるんだ。まあ、よくわからない系は、皆「著名人、著者」ジャンル行きだね。本出してなくてもなれるから、まあ、サイバーエージェントとしては、お付き合いカテゴリだね。ここには、脂ぎった「稼ごうぜ!」系の諸先生も瀕死の状態で生息してるよ。
鈴木正子★アホブロバスターズ
それって、私たちみたいなブログと、どう違うの?
佐藤浩【プアーブロガー養成講座■ブログの真相 】
・コメント欄を人的管理する担当者がつく(批判的なコメントを削除)
・ランキングには参加できない
・できるだけコメント欄にコメント返しをしないよう言われる
・ヘッダにアメーバのバナー必ず定位置に設置し、顔出しをすることなどの規制あり
・ヘッダのデザインは、サイバーの審査がある
・イヤでも自動的に「オフィシャルぐるっぽ」を作られる
・アメーバニュースに優先的に載りやすい
・読者数やなうの登録数に制限がない
・問題発言あれば、勝手に記事削除されることもあり
と、風のうわさで聞いたような気がする。
鈴木正子★アホブロバスターズ
ふ~ん。なんか窮屈ぽいのに、どんなメリットがあるのかなぁ。
佐藤浩【プアーブロガー養成講座■ブログの真相 】
まあ、ブロガーのメリットは、詳しくはここでは書けないので、後でメルマガ で発信するよ^^
サイバーのメリットは、いわゆる口コミ、スティルス・マーケティング部隊のかこいこみというとこじゃないかな。
鈴木正子★アホブロバスターズ
何?スティルス・マーケティングって。
佐藤浩【プアーブロガー養成講座■ブログの真相 】
アメリカでは去年から法規制がかかったけど、日本では「同義的」な問題でしかないけどね。今のところは。
米“クチコミ”広告規制の波紋 2010年1月20日(水)
連邦取引委員会(FTC)は、2009年10月に推奨広告に対する規制の改定版を発表した
発端は、米連邦取引委員会(FTC)が2009年10月に公開し、12月から施行した
改定版「推奨広告と証言広告の利用に関する指針」にある。
テレビや雑誌も規制対象
約30年ぶりに改定されたガイドラインには、昨今のインターネットの普及を受けた新たな広告規制が組み込まれている。
例えば、ブロガーが製品のレビュー記事を書いて報酬を受け取ったり、商品を無料で提供された場合には、その旨を明示しなければならない。
違反した場合には最高で1万1000ドル(約101万円)の罰金を科される可能性がある。
まあ、横文字にするとかっこいいけど、日本では古来から「さくら」という名称で親しまれている手法だね^^
↓
ステルス・マーケティング
【ヤラセ】辻希美がアメブロのサプリメント広告記事で墓穴を掘る
鈴木正子★アホブロバスターズ
オフィシャルは、自己申告でなる人が多いのかなぁ。いろいろ芸能人のイヴェントにも呼ばれるみたいだし。
佐藤浩【プアーブロガー養成講座■ブログの真相 】
実際は、日本におけるステルス・マーケティングの第一人者、トレンダーズあたりがブロガーの斡旋をしているようだね。
トレンダーズ社長 経沢香保子の『人生を 味わい尽くす』ブログ
ああ、もう、お祭り、見に行っていい?イカ焼き食いたいんだよね~
これでも見ててよ。
トレンダーズ株式会社の連結子会社化について
続きは、本日のメルマガで。
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佐藤浩【プアーブロガー養成講座■ブログの真相 】
う~ん。
実は、オフィシャルと一口に言ってもいろいろあって、
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鈴木正子★アホブロバスターズ
それって、私たちみたいなブログと、どう違うの?
佐藤浩【プアーブロガー養成講座■ブログの真相 】
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・ヘッダにアメーバのバナー必ず定位置に設置し、顔出しをすることなどの規制あり
・ヘッダのデザインは、サイバーの審査がある
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・問題発言あれば、勝手に記事削除されることもあり
と、風のうわさで聞いたような気がする。
鈴木正子★アホブロバスターズ
ふ~ん。なんか窮屈ぽいのに、どんなメリットがあるのかなぁ。
佐藤浩【プアーブロガー養成講座■ブログの真相 】
まあ、ブロガーのメリットは、詳しくはここでは書けないので、後でメルマガ で発信するよ^^
サイバーのメリットは、いわゆる口コミ、スティルス・マーケティング部隊のかこいこみというとこじゃないかな。
鈴木正子★アホブロバスターズ
何?スティルス・マーケティングって。
佐藤浩【プアーブロガー養成講座■ブログの真相 】
アメリカでは去年から法規制がかかったけど、日本では「同義的」な問題でしかないけどね。今のところは。
米“クチコミ”広告規制の波紋 2010年1月20日(水)
連邦取引委員会(FTC)は、2009年10月に推奨広告に対する規制の改定版を発表した
発端は、米連邦取引委員会(FTC)が2009年10月に公開し、12月から施行した
改定版「推奨広告と証言広告の利用に関する指針」にある。
テレビや雑誌も規制対象
約30年ぶりに改定されたガイドラインには、昨今のインターネットの普及を受けた新たな広告規制が組み込まれている。
例えば、ブロガーが製品のレビュー記事を書いて報酬を受け取ったり、商品を無料で提供された場合には、その旨を明示しなければならない。
違反した場合には最高で1万1000ドル(約101万円)の罰金を科される可能性がある。
まあ、横文字にするとかっこいいけど、日本では古来から「さくら」という名称で親しまれている手法だね^^
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オフィシャルは、自己申告でなる人が多いのかなぁ。いろいろ芸能人のイヴェントにも呼ばれるみたいだし。
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実際は、日本におけるステルス・マーケティングの第一人者、トレンダーズあたりがブロガーの斡旋をしているようだね。
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2011-08-14 (日)
「自然科学というのは、一つにこの宇宙は単一の自然から成り立っているのよ。第二に、その自然には繰り返し起きる法則性がある。というものなの。」
代替医療師・陽子は本日のコーディネイトを撮影するために20坪もあるかと思える自宅のクローゼットをかき回しながら言う。
「たとえば、ラッセル・ホワイトヘッド・ヴィットゲンシュタインの論理実証主義においては、自然科学が世界を方程式に還元し、世界のすべてを記号論的に写し取ろうとする試みだったわけ。」
今日は旦那と子どもはオーストラリアに帰省中である。こういうときは素直に話を聞いているふりをするのが私のやりかただ。
「EOウィルソン という社会生物学者は、人間の行動の相当部分は遺伝子レベルで規定されてあるので、遺伝子を解明すれば人間がわかるととき、心理学者や社会科学者や文学者と大論争を繰り広げたりしたし、最近だと人工知能の研究者から人間の精神活動は一種の計算であるのだから、やがてコンピュータも精神を持つという論調で物議を醸し出しているのよ。」
「そう?自分の心の動き、あの恋に落ちるときの魔法、美しい自然に感動する心、そうしたものがある方程式で解明されるっていやだなぁ。」
私は、彼女の背中のジッパーを下げながらあいまいに答えた。
「もしそう思うなら、あなたはすでに自然科学的な世界観からすこしずれたところに立って物事を見ているのよ。つまり自然科学では説明しきれない領域が人間の経験や精神の中には存在するのだという立場に立ってしまっているの。」
「ああ、つまり、この世界は二つの実在から成り立っている。それは物質的な世界と精神的な世界である。この精神的な世界を説明するためには自然科学とは別個な方法があると。これはいわゆる人文社会主義というわけだね。」
「で、この立場はとても厄介なものなの。」
そう。私はいつだって厄介ものさ。単純な法則性に還元できないものが人間の人間たるゆえんであるという立場だから、単純化して体系化することを拒否してしまう。そう。人間の数だけ世界を説明する方法があるということになるね。ある人は田渕氏を一番偉いといい、別の人は青山女史が最高だと言える。
「ふふふ、くすぐったいじゃないの。ここには大きな問題点があるのよ。」
「人文科学的な価値観では、簡単にまとめて順番に1から最後まで順位を付けることができない性質のものなの。にもかかわず、なんとか審議委員会とか富のインフルエンサーとかいった社会制度がすでに成立してしまい、成立してしまったからには「優劣の基準」を設定しないではいられない。ボードメンバーとか、参加基準とかね。」
「簡単じゃないの。文化的な価値は本質的に相互主観的な価値を持つものであるが、その評価においては一定の恣意の混入をまぬがれえない。にもかかわらず社会・制度が比較不可能なものを比較するという倒錯した状態をつくりあげ、この枠組みの中で、本来の生き生きした人間的な感動が閉じ込められてしまうということさ。」
彼女は背中の横が弱いようだ。
「し、自然科学のルールは単純なのよ。いかに最小限度の法則で世界を説明できるか。」
「対して人文科学ではいわゆる60億の所説をグループ化するカテゴリーの世界なの。そもそも比較できないことを前提に成り立っている世界のルールは、ある派閥の保証する人間性を維持していくためにはその派のルールを守らなければならなくなるわ。つまり人間性を保証しようして逆に窮屈になり、ルールにからめとられてしまう現象が起きやすいということね。」
「実存主義とかマルクス主義とか、数稽古の法則 とかだね。」
「大体、この立場に立つとき、「人間とは不可知な存在である」というテーゼを忘れてはいけないんだよ。私は人間の経済活動、あるいは経済学という学問自体は、純粋科学ではないと思うね。」
ムスク系の甘い香りが部屋に充満している。
そこに「再現性」「法則」などが存在しえないことは、かつてノーベル経済学賞受賞者たちを集めて派手に誕生したヘッジ・ファンドが、結局大赤字で倒産したことによってもわかりそうなものじゃないか。
「市場が方程式で動いているものなら、単純に連戦連勝も可能だが、実際に「最終判断」を行っているのが、神を信じるわけのわからない「人間」という生物だからさ。」
「ねえ。わけのわからないものを一瞬だけ理解したような気分になれる方法を私は知っているんだけど、試してみる?」
試してみたくない男を見たことがない。
もともとは何の話だったの?といぶかしむ方は、
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今日は旦那と子どもはオーストラリアに帰省中である。こういうときは素直に話を聞いているふりをするのが私のやりかただ。
「EOウィルソン という社会生物学者は、人間の行動の相当部分は遺伝子レベルで規定されてあるので、遺伝子を解明すれば人間がわかるととき、心理学者や社会科学者や文学者と大論争を繰り広げたりしたし、最近だと人工知能の研究者から人間の精神活動は一種の計算であるのだから、やがてコンピュータも精神を持つという論調で物議を醸し出しているのよ。」
「そう?自分の心の動き、あの恋に落ちるときの魔法、美しい自然に感動する心、そうしたものがある方程式で解明されるっていやだなぁ。」
私は、彼女の背中のジッパーを下げながらあいまいに答えた。
「もしそう思うなら、あなたはすでに自然科学的な世界観からすこしずれたところに立って物事を見ているのよ。つまり自然科学では説明しきれない領域が人間の経験や精神の中には存在するのだという立場に立ってしまっているの。」
「ああ、つまり、この世界は二つの実在から成り立っている。それは物質的な世界と精神的な世界である。この精神的な世界を説明するためには自然科学とは別個な方法があると。これはいわゆる人文社会主義というわけだね。」
「で、この立場はとても厄介なものなの。」
そう。私はいつだって厄介ものさ。単純な法則性に還元できないものが人間の人間たるゆえんであるという立場だから、単純化して体系化することを拒否してしまう。そう。人間の数だけ世界を説明する方法があるということになるね。ある人は田渕氏を一番偉いといい、別の人は青山女史が最高だと言える。
「ふふふ、くすぐったいじゃないの。ここには大きな問題点があるのよ。」
「人文科学的な価値観では、簡単にまとめて順番に1から最後まで順位を付けることができない性質のものなの。にもかかわず、なんとか審議委員会とか富のインフルエンサーとかいった社会制度がすでに成立してしまい、成立してしまったからには「優劣の基準」を設定しないではいられない。ボードメンバーとか、参加基準とかね。」
「簡単じゃないの。文化的な価値は本質的に相互主観的な価値を持つものであるが、その評価においては一定の恣意の混入をまぬがれえない。にもかかわらず社会・制度が比較不可能なものを比較するという倒錯した状態をつくりあげ、この枠組みの中で、本来の生き生きした人間的な感動が閉じ込められてしまうということさ。」
彼女は背中の横が弱いようだ。
「し、自然科学のルールは単純なのよ。いかに最小限度の法則で世界を説明できるか。」
「対して人文科学ではいわゆる60億の所説をグループ化するカテゴリーの世界なの。そもそも比較できないことを前提に成り立っている世界のルールは、ある派閥の保証する人間性を維持していくためにはその派のルールを守らなければならなくなるわ。つまり人間性を保証しようして逆に窮屈になり、ルールにからめとられてしまう現象が起きやすいということね。」
「実存主義とかマルクス主義とか、数稽古の法則 とかだね。」
「大体、この立場に立つとき、「人間とは不可知な存在である」というテーゼを忘れてはいけないんだよ。私は人間の経済活動、あるいは経済学という学問自体は、純粋科学ではないと思うね。」
ムスク系の甘い香りが部屋に充満している。
そこに「再現性」「法則」などが存在しえないことは、かつてノーベル経済学賞受賞者たちを集めて派手に誕生したヘッジ・ファンドが、結局大赤字で倒産したことによってもわかりそうなものじゃないか。
「市場が方程式で動いているものなら、単純に連戦連勝も可能だが、実際に「最終判断」を行っているのが、神を信じるわけのわからない「人間」という生物だからさ。」
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もともとは何の話だったの?といぶかしむ方は、
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2011-08-07 (日)
祐一
が万友美
を追って九州に行っている間、ぼやっとしていることもできない。
私は、夏休みに北海道の別荘でキティ・グッズに囲まれてふ抜けている青山先生を訪ねることにした。この人物ならなんとか行方についての手掛かりを握っているのではないかと考えたからだ。
彼女は私の言うことを素直に受け入れたことがない気難しがり屋だ。
「マザーテレサは偉大だわ。貴方は変革姿勢を持たない正義について、ひどく言い過ぎているんじゃないの?」
「ああ。彼女の偉大さの中には「現場対応主義」という現世利益感が漂うものであることが気になっている。」
私は、またかと思いながら、話に付き合うことにした。いつだってアラフォーの女性はこんなものだ。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
1982年、長崎をおとづれた彼女は記者会見で「私たちは社会改革を目的としない」と答えている。
「あるとき裕福な人が私に言いました。」
「なぜあなたは貧しい人に魚を与えるのですか?なぜ魚を捕らえる竿を与えないのですか?」と。
そこで私は答えました。
「この人々は病気や飢えのために立つこともできないのです。ですから私はまず食べることができる魚を与えます。自分で立てるようになったら、今度は皆さんにお願いして魚を捕まえることができるように、その人々に竿を渡してあげてください。」と。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「自分で立てることができない人間が世界中から一人もいなくなる日が来るとは本人も思っていない。したがって改善や発展などの喜びをもたらす役割が自分にやってくる日が来ないと割り切ったうえでこれらの発言がある。」
私は、彼女が自分を批判されているのではないかと思わないように、なるべく淡々として話した。これでも目上の人には結構気を使う方である。
「貴方の言いたいことはわかるわよ。はっきり言って彼女が獲得した世界的名声の数々をもってすれば
インド大統領からのバドゥマシュリ賞
フィリピンからのマグサイサイ国際理解賞
ローマ法王からヨハネ23世平和賞
ジョン・F・ケネディ国際賞
ワシントン大学人間学博士号
インド政府よりジャワハラール・ネール賞
テンプルトン賞
マーテル・マジストラ賞
聖フランシス・アッジ勲章
第一回アルバート・シュバイツアー国際賞
シャンティニキタンバラッド大学名誉博士号
ケンブリッジ大学名誉神学博士号
バルザン国際賞
テンプル大学名誉博士号
ノーベル平和賞
インド最高勲章バラッド・ラトナ勲章
ハーバード大学名誉博士号
聖人
それができる立場の人間が、改革の行動を起こさないことが、消極的な悪であるという理屈ね。」
「ああ。人生の後半20年は毎年授賞式に出ているだけだ。この「宗教的」活動を「政治的」な次元に移行させることは、可能であったのではないか。」
私はまだ青い。
「「もっとも貧しいもの」が存在する理由である、貧しいものを生み出す社会的な「ひずみ」を生み出すものの「治療」は、最終的には社会改革という政治的な活動に移行するしかないと?」
「そう。それが可能であった彼女は、それを避けた。」
彼女は私の顔を見ないようにして答えた。
「結局、人間は自分にできることを淡々とこなす者よ。他人がそれをしなかったからと言って貴方ににそれを批判することはできるの?アメーバ・マスターズ が嫌いなら、貴方が自分自身で壊すべきだわ」
「・・・・」
感の鋭い女性である。こんな時は、言葉に頼っていては言いくるめられてしまう。私は男で彼女は女だ。いくつだって方法はある。
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彼女は私の言うことを素直に受け入れたことがない気難しがり屋だ。
「マザーテレサは偉大だわ。貴方は変革姿勢を持たない正義について、ひどく言い過ぎているんじゃないの?」
「ああ。彼女の偉大さの中には「現場対応主義」という現世利益感が漂うものであることが気になっている。」
私は、またかと思いながら、話に付き合うことにした。いつだってアラフォーの女性はこんなものだ。
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1982年、長崎をおとづれた彼女は記者会見で「私たちは社会改革を目的としない」と答えている。
「あるとき裕福な人が私に言いました。」
「なぜあなたは貧しい人に魚を与えるのですか?なぜ魚を捕らえる竿を与えないのですか?」と。
そこで私は答えました。
「この人々は病気や飢えのために立つこともできないのです。ですから私はまず食べることができる魚を与えます。自分で立てるようになったら、今度は皆さんにお願いして魚を捕まえることができるように、その人々に竿を渡してあげてください。」と。
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「自分で立てることができない人間が世界中から一人もいなくなる日が来るとは本人も思っていない。したがって改善や発展などの喜びをもたらす役割が自分にやってくる日が来ないと割り切ったうえでこれらの発言がある。」
私は、彼女が自分を批判されているのではないかと思わないように、なるべく淡々として話した。これでも目上の人には結構気を使う方である。
「貴方の言いたいことはわかるわよ。はっきり言って彼女が獲得した世界的名声の数々をもってすれば
インド大統領からのバドゥマシュリ賞
フィリピンからのマグサイサイ国際理解賞
ローマ法王からヨハネ23世平和賞
ジョン・F・ケネディ国際賞
ワシントン大学人間学博士号
インド政府よりジャワハラール・ネール賞
テンプルトン賞
マーテル・マジストラ賞
聖フランシス・アッジ勲章
第一回アルバート・シュバイツアー国際賞
シャンティニキタンバラッド大学名誉博士号
ケンブリッジ大学名誉神学博士号
バルザン国際賞
テンプル大学名誉博士号
ノーベル平和賞
インド最高勲章バラッド・ラトナ勲章
ハーバード大学名誉博士号
聖人
それができる立場の人間が、改革の行動を起こさないことが、消極的な悪であるという理屈ね。」
「ああ。人生の後半20年は毎年授賞式に出ているだけだ。この「宗教的」活動を「政治的」な次元に移行させることは、可能であったのではないか。」
私はまだ青い。
「「もっとも貧しいもの」が存在する理由である、貧しいものを生み出す社会的な「ひずみ」を生み出すものの「治療」は、最終的には社会改革という政治的な活動に移行するしかないと?」
「そう。それが可能であった彼女は、それを避けた。」
彼女は私の顔を見ないようにして答えた。
「結局、人間は自分にできることを淡々とこなす者よ。他人がそれをしなかったからと言って貴方ににそれを批判することはできるの?アメーバ・マスターズ が嫌いなら、貴方が自分自身で壊すべきだわ」
「・・・・」
感の鋭い女性である。こんな時は、言葉に頼っていては言いくるめられてしまう。私は男で彼女は女だ。いくつだって方法はある。
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2011-07-31 (日)
祐一は品川駅で万友美
の父とおちあった。義父の方が先についていて次の新幹線の切符を買っておいてくれていた。
「これが安曇の家の番地と地図だ。なにしろあのあたりにはずいぶん行っていないし、新しい道などができているかもしれないから、大変かもしれん」。
「アメーバ・マスターズ の力を総動員してでも探します」
祐一 は切符とメモを受け取っていった。義父は祐一が財布を出しかけたのを見ると、その手を押さえつけるようにして、金はいいといった。
「二人が円満にやっていたのは、私もよく知っている。万友美にも税金の滞納以外、今の暮らしに不足はなかったようだ。だから突然いなくなるなんて考えられないが、とにかくこうなってしまった」
義父はそこで言葉を切り、かすかに頭を下げて見せた。
「安曇家というのは、亡くなった義母さんの実家になるわけですか」
祐一は少し口ごもりながら聞いた。
「そうだ。あれは万友美が8つの時に死んだ」
「なぜ万友美だけ、そのおじいちゃんと往来していたのでしょう」
「あの子が一人で旅ができるようになってからのことさ。それ以前に私と安曇家は、妻が死んでからいったん縁が切れた様になっていたから、あの子が一人で関係を復活させたようなものだよ。おじいちゃんも独り身でさみしくなっていたのだろう。たいへん可愛がってくれたようだ」
祐一は義父からもらったメモを見た。
「安曇信弘・・」
「そうだ。たしか今年でちょうど80歳になるはずだ」
「福岡県宗像市・・」
「うん。宗像大社の近くだ」
祐一はもっと義父から聞いておくべきことがあったような気がしたが、新幹線の来る時間になっていた。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・
その家は何もかも小ぶりにこしらえてあるような感じであった。しかしそれでいて柱などは十分に太く、やや薄暗いが重厚な雰囲気を醸し出している。
室内には良質な香の匂いが隅々まで深くしみ込んでいるようだった。その匂いは新幹線とタクシーを乗り継いでやってきた祐一には、欲にまみれた全身の肌にしみとおるように感じられたのであった。
万友美の祖父にあたるというこの老人は、長い沈黙の中で茶を立てていた。祐一をこの家へ招き入れてから、まだ一言も口をきいていない。その部屋のその場所に祐一を座らせて、長い時間姿を見せなかった。そう広くはない家なのに、老人が立ち動く姿は全く聞こえず、祐一は予想もしなかった深い静けさの中に身を沈めることとなった。
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「二人が円満にやっていたのは、私もよく知っている。万友美にも税金の滞納以外、今の暮らしに不足はなかったようだ。だから突然いなくなるなんて考えられないが、とにかくこうなってしまった」
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「安曇家というのは、亡くなった義母さんの実家になるわけですか」
祐一は少し口ごもりながら聞いた。
「そうだ。あれは万友美が8つの時に死んだ」
「なぜ万友美だけ、そのおじいちゃんと往来していたのでしょう」
「あの子が一人で旅ができるようになってからのことさ。それ以前に私と安曇家は、妻が死んでからいったん縁が切れた様になっていたから、あの子が一人で関係を復活させたようなものだよ。おじいちゃんも独り身でさみしくなっていたのだろう。たいへん可愛がってくれたようだ」
祐一は義父からもらったメモを見た。
「安曇信弘・・」
「そうだ。たしか今年でちょうど80歳になるはずだ」
「福岡県宗像市・・」
「うん。宗像大社の近くだ」
祐一はもっと義父から聞いておくべきことがあったような気がしたが、新幹線の来る時間になっていた。
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その家は何もかも小ぶりにこしらえてあるような感じであった。しかしそれでいて柱などは十分に太く、やや薄暗いが重厚な雰囲気を醸し出している。
室内には良質な香の匂いが隅々まで深くしみ込んでいるようだった。その匂いは新幹線とタクシーを乗り継いでやってきた祐一には、欲にまみれた全身の肌にしみとおるように感じられたのであった。
万友美の祖父にあたるというこの老人は、長い沈黙の中で茶を立てていた。祐一をこの家へ招き入れてから、まだ一言も口をきいていない。その部屋のその場所に祐一を座らせて、長い時間姿を見せなかった。そう広くはない家なのに、老人が立ち動く姿は全く聞こえず、祐一は予想もしなかった深い静けさの中に身を沈めることとなった。
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