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こんにちは。

とりあえずは習作で一通り書き下してみます。完成した後、手を加えてまとめようと思います。

【秘境列島1(習作)・プロローグ】

ヒント別冊【秘境列島2(習作)・プロローグ】

【秘境列島3(習作)・第一章名古屋にて】

ヒント別冊【秘境列島4(習作)・第一章名古屋にて】

の続きです^^



隣の部屋から話し声が聞こえてくる。隣は、この神社の禰宜、藤村正宏の部屋である。藤村は隣の部屋に聞こえるような大声で話をしたりはしない。たぶん、巫女の誰かが油を売りに着ているのだろう。

佐藤はタバコを吸いながらコーヒーに口をつける。自律神経とは凄いもので、意識をせずに煙は肺に液体は胃に送り込んでくれるものだ。これをいちいち意識してやっていては、一日かかってしまいそうである。

引き戸がノックされたので返事をする。

「失礼しま~す」青山陽子が入ってきた。

巫女の服装と言うのは冬場は大変そうである。白い上衣に赤い袴。白の足袋。何の変哲も無い見慣れた衣装だが、最近ではこの装束に憧れてこの業界に入ってくるものもいるらしい。

彼女はここに今年の3月から就職したばかりだ。やけに気安く入ってくるのは、青山陽子が佐藤の先代であった畑岡宮司の妹さんの娘であることが大きい。妹さんは3年前に交通事故で亡くなったのだが、それ以前には母娘でここを訪れる機会も度々あり、佐藤は小さいときから陽子のことはよく知っていた。

「先生、タバコをおやめになれば?」陽子は佐藤の顔を覗き込んで言った。「すぐやめれますよ」

佐藤は苦笑いの表情のまま首をかしげる。辞めるつもりが無い。

「コーヒー入れなおします?」陽子は応接の椅子に座り込みながら聞いた。

「いいよ。今飲んでるから。青山君が飲みたいのなら入れていいよ」

佐藤は言った。以前は陽子ちゃんと呼んでいたのであるが、同じ職場でちゃんづけも妙であると判断して、ここでは彼女のことをそう呼んでいた。

「じゃ入れますね」

陽子は、水を汲んできて、コーヒーメーカーをセットする。彼女は佐藤同様ブラックコーヒーが好きだったが、不思議と青山家で陽子がコーヒーを飲んでいるところを見たことが無かった。

母親が亡くなってからの彼女の変化は著しかった。当時高校3年生であった彼女は先代の畑岡宮司の薦めで熱田神宮学院に2年通ってここに来たわけだが、その間はほとんど佐藤が彼女を見ることは無かった。

佐藤が覚えている高校生の陽子は、髪が長く、いつもスカートで、青山婦人と同様、聞き取りにくいほど小さな声で話をする女の子だったが、最近では衣装に着替える前は大体ジーンズで、しゃべり方もずいぶんと快活になっていた。

佐藤は陽子の後姿を少しの間みていた。



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