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こんにちは。

とりあえずは習作で一通り書き下してみます。完成した後、手を加えてまとめようと思います。

【秘境列島13(習作)・第二章沖津宮】

ヒント別冊【秘境列島14(習作)・第二章沖津宮】

の続きです^^



六本木ヒルズ・レジデンス。東京神伝教会の新しい本部は、港区の白金台からここへ引っ越してもう3年になる。

先刻、この聖なるペントハウスで、新靖樹正太子が小さな旅行かばんに荷物を詰め、細身のプラダのジャケットを身に着けた。いつもなら鰐皮のハーフブーツを履くのだが、今夜は舗装していない道を通るかもしれないので、通常のジョンロブの靴にした。よほどの観察眼を持つ人だけが正太子の指輪に気がつくだけだ。

14カラットの金で出来たその指輪には、紫のアメジストと大きなダイヤモンドがはめ込まれ、16紋の菊の神紋が彫ってあった。旅行かばんを肩に書け、声を出さずに祈りを唱えて部屋を出て、地下の駐車場に降りた。パールブラックのアストン・マーチンが彼を空港まで運ぶのにそう時間はかからない。

今、新靖樹は関空行きの飛行機の中から暗い太平洋を見ていた。日はとうに沈んでいるが、彼の太陽は今、昇りつつあった。今夜、戦いに勝利するのだ。ほんの数ヶ月前、自分の帝国がなすすべも無く崩壊しようとしていたことが遠いかこのことのように思えた。

東京神伝教会の代表として、この10年間、政財界の有閑マダムを中心にして、彼は神道系の秘密結社である会の教義とワークを静かに広めてきた。その前任者がそうであったように。

明治維新までおよそ800年、31代に亘って、宮中祭祀を取り仕切ってきた貴族の家系、伯家(白川家) に継承されてきた神道を伯家神道と呼ぶ。吉田神道が国家神道という「新しい概念」を提示して天皇の神道というものが国の中心に据えられるまでのこの国の秘智の宗家であった。

白川家の特徴は、神祇伯の世襲と、神祇伯就任とともに「王」を名乗れたことである。「王」の身位は天皇との血縁関係で決まり、本来は官職に付随する性質のものではないが、非皇族でありながら、王号の世襲を行えたのは白川家にのみ見られる特異な現象だった。

その最後の塾頭・高浜清七郎が太古から伝わる相伝の秘儀を秘密裏に伝えるために起こしたのが彼の協会である。

明治期に一部が民間に流れ、本田親徳 の鎮魂帰神法や出口王仁三郎 の思想の源流ともなったものであるが、この本筋は物部神道と言っても良いものであった。

東京神伝教会は多大な寄付とセミナーによって主要都市に支部を抱える最も安定した神道系秘密結社になった。

しかし不幸にも、宗教不信やカルト問題、電波芸者やエセ自己啓発セミナーがはびこるこの時代では、東京神伝教会の増大する資産や影響力が疑惑を招くということも、新靖樹は十分承知していた。



日々の発想のヒント!先生業のネタ本。



↑3月27日(火)【進化精神医学】アレルギーと自殺との相関関係、発信終了。

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